使徒信条

使徒信条についての祈り

時間とやる気のある人なら、
信仰告白(使徒信条)についても、
今までと同じように、
四層に分けられ結び合わされたささやかな祈りの冠を編んでみたい、
と思うかもしれません。
信仰告白(使徒信条)は、教理問答書では、
神様の三つのペルソナ(位格)に対応して、
三つの部分に分けられています。

「天地の造り主、全能の父である神を私は信じます。」(使徒信条、その1)

永遠なる神様、あなたは私にここで、
私が何であり、どこから来たのか、天地がどこからできたのか、
教えてくださっています。
私は、あなたの御手によって造られた被造物であり、
自分では何もできない、ちっぽけな存在です。
千年前に、私はどこにいたのでしょう。
天と地は、6千年前にはどこにあったのでしょう。
それらは空虚でした。
そして、それは、自らは何も創造しえない空虚そのものでした。
しかし、私という存在や、私が知りうることはすべて、
あなたがお造りになったものです。
私が誇らしく思うことと言えば、
あなたが、取るに足らない私という存在を造ってくださったことと、
いつでも一瞬にして私を消し去ることもおできになるということだけです。

第二に、私は、あなたに心から感謝します。
あなたは、その善き性質に基づいて、
私たちを空虚からお造りになりました。
私たちは、身体と魂、理性、五感を有するちゃんとした被造物として、
毎日生命を保たれています。
あなたは、私たちが、地、魚、鳥、動物などを支配するようになさり、
さらには、
愛する御子において、すべてを私たちの手にゆだねてくださいました。

第三に、私は、自分の不誠実さと感謝に欠けた心とを告白し、嘆きます。
私は上に述べたことを心から受け入れてはいませんでした。
それを信じず、考えず、理解もしなかったのです。
つまり、私は理性に欠けた野卑な者だったのです。

第四に、私は、正しく強い信仰をあなたからいただけるように祈ります。
私の愛する神様、あなたは、
私を今もなお休むことなく維持して、
すべて生活に必要なものを用意して、
あらゆる悪を私のもとから追い払い、
私にありとあらゆるよいことをしてくださっています。
これからは、私が、
あなたを私自身の造り主としてそのまま素直に受け入れ、
あなただけを堅く信じていけますように。
すべての貧しく惨めな者の父なる神様、
私たち皆にあなたの恵みをお与えください。
そして、私たちを真理によって照らしてください。
あなたに賛美と栄光と感謝が永遠にありますように。
アーメン。

「そのひとり子、わたしたちの主 イエス・キリストを、私は信じます。主は聖霊によってやどり、おとめマリヤから生まれ、ポンテオ・ピラトのもとに苦しみを受け、十字架につけられ、死んで葬られ、陰府に下り、三日目に死人のうちから復活し、天に上られました。そして全能の父である神の右に座し、そこから来て、生きている人と死んだ人とをさばかれます。」 (使徒信条、その2)

ここでまた、あなたの大きな光が輝いています。
あなたの創造の御業の後、アダムの罪の出来事を通して、
私たちは死の中に落ち込むことになり、
不幸の中で絶えずさいなまれることになりました。
ところが、あなたの光は、御子キリストを通して、
これほどまでに惨めな私たちがどのようにして死から解放されたのか、
私たちに教えてくださいます。

父なる神様についての信条によって、
私は、自分もまた、
神様がお造りになったもののうちの一つであることを、
認めなければなりません。
ですから、
私は、自分もまた、
神様が贖ってくださった者たち
(つまり、私たちのために流されたイエス様の尊い血によって、
罪の呪いから解放された者たち)
の一人として確かに数えられていることを、疑ってはなりません。

そして、他の一連の言葉の前に、
「私たちの」という一言を付け加えて、
「私たちの主、イエス・キリストは、
私たちのために苦しみを受け、私たちのために死に、
私たちのために復活なさいました(等々)」、
と言うべきです。

これらすべては、私たちのためなのであり、
私たちにかかわりがあることです。
御言葉が教えているとおり、
私もまた、
「私たちのための」と呼ばれる会衆の一員なのです。

第二に、私は、
あなたにこの大いなる恵みについて心から感謝します。
また、私は喜んでいます。
あなたは、
私を罪や死や地獄から贖い出してくださり、
御業によって確保してくださった義を「私のもの」としてくださり、
私を天の御国を継ぐ者としてくださったからです。

第三に、私は、
嘆き悲しみ、自分の恥ずべき不信仰を告白します。
私は、あなたの恵みを疑ったのです。
(間違った)礼拝や数え切れないほどの行いによって、
あなたの贖いの御業を拒むという、御心に適わないことを、
今まで私はどれほどたくさんしてきたことでしょうか。
考えるだけでも気が滅入ってきます。

第四に、愛するお父様、私は、
あなたに祈ります。
どうか私が、
これからこの世での私の人生が終わる時まで、
私の主キリストを正しくきよく信じ続けることができるように
なさってください。
主イエス様、あなたは、
私たちの王です、私たちの平和です、
私たちの光です、私たちの命です。
あなたの力と聖なる御言葉によって、
私たちの心を照らし、目覚めさせ、
強め、永遠の命へと導いてください。
あなたに賛美と感謝と栄光が永遠にありますように。
アーメン。

「聖霊を私は信じます。また、聖なる公同の教会、聖徒の交わり、罪のゆるし、からだの復活、永遠のいのちを信じます。」(使徒信条、その3)

これは、三番目の大きな光です。
使徒信条の第一部と第二部で、私たちは、
「造り主」であり「贖い主」であるお方に対して、
信仰告白しました。
 
この地上の一体どこで、
目に見える具体的なかたちで、
私たちがこの方を見いだし、この方とお会いできるのか、
この大いなる光は、私たちに教えてくれます。

聖なる公同の教会が存在するところには、
造り主なる神様、贖い主なる神様、聖霊なる神様、
すなわち、三位一体なる神様がおられます。

聖霊様は、罪の赦しによって、
日々私たちを聖なる者としてくださいます。
教会は、この信仰について御言葉が正しく説教され、
宣べ伝えられるところにこそ存在しています。

教会において聖霊様が日々教会の中でなさっている働きについて、
私たちは、調べて学ぶべきことがたくさんあります。

それゆえ、愛する父なる神様、私はあなたに感謝します。

あなたは私を、この教会に入れてくださいました。

あなたは私に、聖霊様、すなわち、真理と恵みと祈りの御霊を、
天の御国を永遠に相続する証印として賜りました。

あなたは私を、福音の光の中へと招いてくださいました。

あなたは私を、御言葉と洗礼を通して、
キリスト教会に植えてくださいました。

そして、私の中に、
正しい信仰、神様についての正しい知識、
神様に助けを求める祈り、神様への従順な心
を起こしてくださいました。

あなたは、罪や死や地獄が私をおびえさせないように、
日々私にすべての罪の赦しを与え、
死者の復活と永遠の命によって、私を慰めてくださいます。

私がこの世での人生を終えた私をよみがえらせ、
私も含めキリストを信じる者皆に、
恵みと憐れみにより、ひとえにキリストのゆえに、
不死なる永遠の状態と、喜びと、光輝と、救いを、
贈り与えてくださいます。

それから、私はあなたに、
自分の不誠実さと感謝に欠けた心を告白して、嘆きます。
私は、上に述べてきたあなたからの賜物を、
今まで少しも大切にしてこなかったのです。

それで、私は祈ります。
すべてが永遠に保たれている場所(天の御国)にたどりつくまで、
それを忍耐強く待ち続ける正しく堅実な信仰を、
どうか私に与えてくださいますように。
死者の復活が起こった後で永遠の命が始まる時、
あなたの中、あなたの御前で、
天使全員と選ばれた人々と一緒に、
私が永遠の喜びを受け、
あなたに感謝して仕えることができるのだ、
と、この信仰は知っているからです。
アーメン。


使徒信条に関連したルターの祈り
 
愛するお父様、私たちは祈ります。

どうか私たちにまず御言葉をください。
そうして、福音が世界中で正しく宣べ伝えられますように。

第二に、福音が信仰を通して受け入れられ、
私たちの中で活きて働き続けますように。
あなたの御国が、私たちの只中で、
御言葉と聖霊様の力によって広がって行って、
悪魔の帝国が崩壊しますように。

完全に滅び去るまで、悪魔の帝国が、私たちに対して、
いかなる権威も力も持ち得ないようになさってください。

そして、ついには罪と死と地獄が滅ぼされて、
私たちが、
永遠に完全なる義と救いの中で生きて行けるようになさってください。

愛する主なる神様、
私たちが、あなたのあらゆる憐れみによって、
キリストのことを正しく知っていくことができるように、
助けてください。

また、
洗礼者ヨハネの声をたずさえた福音伝道者の大いなる一団を、
宣教のために世界中に遣わしてください。

愛する主イエス・キリスト様、
私たちが、この盲目で冷酷な世を前にして、
あなたの御霊を通し、堅い信仰によって、
あなたと御言葉への信仰を告白できるように助けてください。 

暴政を行う者たちが(キリスト信仰者を)迫害しています。
彼らに対して、どうかその罪を赦してください。
そして、あなたの恵みの光によって、
誘惑され迷子になった者たち皆の心を照らしてください。

あなたへの感謝と栄光と御国の拡大のために、
支配者たちの心を指導してください。

悪魔のあらゆる仕業とその帝国とを滅ぼしてください。

あなたの再臨の時まで、
私たちを、きよく、責められることがない者として守るために、
どうかあなたが私たちと共にいてください。

あなたに、感謝と栄光が、
天のお父様と聖霊様と共に、永遠にありますように。

アーメン。


使徒信条に関連したルターの祈り

愛する父なる神様、
私たちには、あなたに賛美と感謝を捧げる理由があります。
あなたは、私たちを、御子を通して、
悪魔の帝国から解放してくださいました。
以前、私たちは皆、悪魔の帝国の中で獄につながれ、
そこから自分自身の力では抜け出すことができなかったのです。
あなたは、私たちに、尊く恵みに満ちた福音を与えてくださいました。
そして、言葉では言い尽くせないほどの大いなる恵みを、
私たちにゆたかに示してくださいました。

愛するお父様、
私たちが福音を大切に保って、福音に留まり、
他の人たちも皆、
福音へと導かれ助けを受けることができるようになりますように。

愛する主キリスト様、
私たち皆にあなたの御霊と賜物をお与えください。
私たちがそれらを自慢するためにではなく、
キリスト教会の改善に役立てるためです。
また、あなたの御言葉が、
その目的に沿って正しく配布されていくためです。
それらが、
私たちにとっては、私たち自身の罪と不適格のゆえに恥辱となり、
あなたにとっては、素晴らしいあなたの恵みと賜物についての
永遠の賛美と栄光と愛と感謝となりますように。

アーメン。


使徒信条に関連したルターの祈り

恵みと憐れみの神様、
私が存在したり生きたり動いたり何かやったりするよりも以前に、
あなたは私を母の胎の中で守り、
御自身の被造物として恵み深く世話をし、
真心のこもった配慮を与え、
不思議な方法で養ってくださいました。

人間を誠実に守られるお方であるあなたは、
私が人間としてこの世に生まれ、生き、歩き、立ち、働き、
御言葉の助けによってあなたを知った今、
このあなたの善性を以前にも増してゆたかに私に示してくださっています。

たしかに人々の目には全然このようには見えず、
墓に入るまで私に染み付いている「古いアダム」が
福音に反抗し続けてていますが、
これは動かぬ事実なのです。

しかし、どのように見えようとも感じられようとも、
私はちっとも心配しないし、自分を戸惑わせたりもしません。
私が母の胎にいるときからずっとあなたこそが私の主であられる、
という御言葉に、私はしっかりと繋がりつづけます。
この御言葉は、(私を)裏切ったり間違った道に連れ出したりはしません。
そう私は信頼しています。
この御言葉を通して、
目に見え傍にあるものをあえて目に留めず、
忍耐と希望の中で目には見えないものを待ち望むような信仰を、
どうか私に起こし、強めてください。

これからもずっと私たちを憐れんでください。
あなたの召使い、貧しく惨めな子どもたちの魂に喜びを与えてください。
彼らは、休むことなくあなたに向かって叫び続けています。
私たちの心を喜ばせ、その良心に平和をお与えください。
それによって、私たちが御顔の前で恐れずにすみ、
あなたが私たちに対して憐れみと恵み深いお方であることについて、
また、
私たちのすべての活動と思いと言葉と仕事とが、
あなたの御子、私たちの救い主のゆえに、
あなたにとって喜ばしく好ましいものである、ということについて、
私たちが堅く確信を持つことができるようになるためです。

私の主、私の神様、あなたが永遠にほめたたえられますように。
アーメン。


使徒信条に関連したルターの祈り

全能にして永遠なる神様、
私たちはあなたに、
愛する御子、主イエス・キリストの御名によって、
祈ります。

第一に、私は、御霊による支配と敬愛する説教職のために祈ります。

神様の御言葉の宝をはっきりと混じりけなく宣べ伝える、
真摯で誠実な説教者を、私たちに与えてください。
恵みにより、私たちを異端や間違った教えから守ってください。

感謝にまったく欠けた私たちの心を、
どうかごらんにならないでください。

その感謝の足りなさといったら、
あなたがとうの昔に私たちから
聖なる御言葉を取り去るのが当然であるほど、
ひどいものなのです。

どうか私たちをそれほど厳しくは罰さないでください。
愛する御言葉が私たちから奪われるくらいなら、
いっそのこと疫病や他の罰をくださいますように。

また、私たちに感謝の心をお与えください。
私たちが聖なる御言葉を愛して、
貴く大切なものとして受け入れ、
敬いの心をもってそれに聴き入り、
またそれによって癒されていきますように。

私たちが御言葉を正しく理解し、
それにしたがって生き、
自分たちの仕事によってそれを実行し、
信仰とよい行いを通して、日々前進していけますように。

御名が聖なるものとして受け入れられ、
御国が私たちのもとに来て、
御心がなりますように。

この世における支配組織と、
キリスト教会のすべての公的権威とを、
あなたの守りの中に入れてください。

聖霊様と御言葉によって、彼らの心を照らしてください。
それによって、あなたの御言葉と栄光が、
彼らを通して妨げられることなく広まっていき、
私たちが、彼らの支配の中で落ち着いた静かな生活を、
キリスト信仰者らしく送っていくことができますように。

私たちの支配者が敵と戦うときに、
彼らに助けと恵みと憐れみを与えてください。

私たちの誰も恐怖政治の圧制に陥ることがないようにしてください。

とりわけこの世の支配組織を、あなたの御手にゆだねたいと思います。
それを通して、あなたは私たちを守ってくださっているわけですから。
支配組織の運営がうまく行きますように。

神様の御言葉、貞潔、その他、キリスト信仰者にふさわしい生き方が
一般に広がっていきますように。

まだたくさん残っているあらゆる悪が消えていき、
公共の福祉が、平和を大切にするよい支配組織に守られながら、
浸透して行きますように。

そして、私たちもまた、
従順にキリスト信仰者にふさわしく生きていくことができますように。

とりわけ病人、女性、子ども、
そして肉体的にも霊的にも弱り苦しんでいる人たち皆に、
どうか目を留めて、支えてくださいますように。
彼らやその他すべての危険と困難に陥っている人たちのために祈ります。
「愛するお父様」。

すべての祈りは、
力強い「アーメン」という言葉で締めくくるようにしなさい。

愛する神様、
愛する御子の御名と信仰によってお捧げする私の祈りは、
あなたの御心にかなっており、確実に聴いていただけている、
ということを私は知っています。
アーメン、アーメン。

ルターの著作の翻訳者 高木賢(フィンランド・ルーテル福音協会)
このサイトに引用されているのは聖書新共同訳です。
聖書 新共同訳:(c)共同訳聖書実行委員会

Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会 Japan Bible Society, Tokyo 1987,1988

マルティン・ルター
1483年~1546年
神学者、牧師
宗教改革の創始者