死に臨んで

死に臨んで (その1)

救いの幸いの中で死に、
立派な態度でこの世から去りたいと願う人は、
次のように考えて祈るべきです。

憐れみ深い神様、どうか私のことを憐れんでください。
私は貧しい罪人です。
私はあなたを怒らせるようなことしかしませんでした。
しかし、たとえ私が今まで自分のやりたいように生きてきたとしても、
私はある事実に信頼します。
その事実を私はたしかに知っており、それを疑うことは許されません。
すなわち、
私は罪の赦しのために洗礼を受けており、
「キリスト信仰者」の名前をいただいているのです。
私の主キリストは私のために生まれ、苦しみを受け、
死んで、復活なさいました。
そして、私の信仰を養い強めるために私にその身体と血とを賜りました。
また、キリストの御名と御力によって、
私は罪の赦しの宣言を受けており、罪から解放されています。

このような心の持ち主が
不幸なままでこの世から離れて滅んでしまうことはありえません。
神様の御言葉は曖昧なものではなく、人を欺くこともないからです。
このことについて私は確信してよいのです。
神様御自身がそれを御言葉によって保証してくださっているからです。
アーメン。

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死に臨んで (その2)

私の愛する主よ、
あなたがよく御存知のように、私は貧しい罪人です。
にもかかわらず、
あなたは愛する御子イエス・キリストを通して
私に憐れみ深くあろうと望まれ、
私の罪を赦し、
怒りと裁きの一切を無効にすることを私に告げてくださいました。
しかも、私がこのことを信じて疑わないように命じておられます。
このことに信頼しつつ、私はこの世から去りたいと思います。

主よ、
天にも地にも安全な避難場所は
キリストを通して出会えるあなたをおいては他にないことを、
私は存じております。
私はすべての仕事と友人と自分の業績から引き離されて
真っ裸の状態でこの世を去っていかなければならないのです。

主よ、
私には御子が座っておられる神様の御許をおいて
他にはいかなる避けどころもありません。
もしもこの希望がなかったとしたら、
とっくに私は滅んでしまったことでしょう。

アーメン。

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死に臨んで (その3)

愛する主イエス様、
私は戒めを満たすことができません。
私にはまだ罪があります。
私は死と地獄を恐れています。
しかし、
私はあなたが私に御自分のすべてのみわざを賜ったことを
福音から聴いて知っています。
そして、このことを私は確信しています。
あなたは決して嘘を言われません。
あなたは約束されたことを実行なさいます。
その証印として私は洗礼にあずかりました。
この洗礼に私は信頼を寄せます。

愛する神様、
あなたは「私のもの」ですから、
私は喜びをもって死んでいきたいと思います。

愛するお父様、
それがあなたの御旨に適うことなのですから。
死は私を傷つけることができません。
死はあなたの勝利に呑み込まれたからです。

主なる神様、
あなたに感謝いたします。
あなたは私たちに主イエス・キリストを通じて勝利を与えてくださいました。
アーメン。

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ルターの著作の翻訳者 高木賢(フィンランド・ルーテル福音協会)
このサイトに引用されているのは聖書新共同訳です。
聖書 新共同訳:(c)共同訳聖書実行委員会

Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会 Japan Bible Society, Tokyo 1987,1988

マルティン・ルター
1483年~1546年
神学者、牧師
宗教改革の創始者